2013年8月26日、JSPS-NRCTセミナーの講演者である稲葉准教授と佐藤准教授とともに、副センター長と現地職員でバンコク市内クロントイ地区にあるドゥアン・プラティープ財団を訪問しました。
ドゥアン・プラティープ財団は、1978年にプラティープ・ウンソンタム・秦先生によって設立されました。プラティープ先生は、1952年にクロントイ・スラムに生まれ、クロントイ・スラムにおける 「一日一バーツ学校」などの取り組みが認められ、1978年8月31日、アジアのノーベル賞といわれる「ラモン・マグサイサイ賞」(社会福祉部門)を受賞 しました。その時の奨励金2万ドルを基金として財団は設立されました。
当財団は、教育・健康・社会福祉・人材育成・人命・財産の保護対策の5つの分野で22のプロジェクトを実施しており、「教育と知識が人生を変えることができる」ことを信じてスラム地域の子供達の将来のために活動してきました。今回の訪問では、スラム地区の子供達のために設立された幼稚園やクロントイ・スラムの訪問、財団の事業紹介をして頂きました。大変幸運なことに、プラティープ先生から直接財団の事業紹介を受けることが出来ました。
スラムを取り巻く環境は、刻一刻と変化しており、住民の移転の問題、他国からの労働者の流入によるスラムの国際化といった問題に直面しています。もちろん、日本を始め多くの国々からの支援もあるものの、財団の自律的な運営についても今後考えていく必要があるとのことでした。
佐藤先生や稲葉先生が話されていましたが、タイにおけるスラム地区の開発支援をテーマとした共同研究を将来的に視野に入れることも可能であり、JSPSが学術的に支援する可能性は大いにあると言えます。
また、プラティープ財団の支援を受けて今年7月にクロントイ・スラム出身で初めて博士号を取得したポーンティップ・パーンインさんがいらっしゃるとの説明を受けて、当センターよりJSPS外国人特別研究員制度について紹介したところ、プラティープ先生及び財団スタッフも非常に関心を持ってくださり、9月11日に財団を訪問し、制度の説明を行うことになりました。パーンインさんの博士号取得については、当地の英字新聞及び日本のニュースでも取り上げられており、ポスドク支援の一環として当センターが輝かしい将来を持つ若手研究者の支援が出来ればと考えています。