2011年11月30日(水)から12月3日(土)まで、センター長および副センター長がミャンマーに出張しました。目的は、ヤンゴン市内セドナホテルで12月1-2日に開催されるICSE 2011 (The 3rd International Conference on Science and Technology)に参加し、JSPSの事業紹介を行うことです。
ICSEは2009年よりミャンマーの科学技術省(MOST: Ministry of Science and Technology)が開催しており、ミャンマー全土及び海外からも主に工学関係の研究者を招へいして行われる国際シンポジウムです。ミャンマーにおいてはほぼ唯一と言っていい国際的な科学研究集会で今回が3回目となります。
ミャンマーのほか、中国、オーストラリア、シンガポール、ドイツ、アメリカ、マレーシア、イスラエル、タイ、アラブ首長国連邦、日本の10カ国から約150人の研究者が参加し、分科会形式でそれぞれに研究発表を行いました。その分野は機械工学、電気、電力、電子機械、情報、物理、化学、土木、生物工学、リモート・センシング、数学の多岐にわたり、ミャンマーの科学技術動向を観察する上ではまたとない機会です。
開会式では科学技術副大臣H. E. Dr. Ko Ko Ooが登壇して挨拶を述べるなど、ミャンマーが国を挙げて科学技術振興に踏み出している熱気が伝わりました。
当センター長が自身の研究発表と兼ねてJSPS事業紹介を行ったところ持参したブローシャー300部がすべて配布されるなど、外国資金による人材育成に対する関心も非常に高いものがあります。事業紹介後には、スウェーデン王立工科大学で学位を取得され、MOSTの科学技術研究部門の元長官でありスウェーデン名誉領事でもあるDr. Myint Hanがコメントを述べられ、長期間にわたって孤立した状況にあった当国における、海外で研鑽を積む機会を得ることの重要性を確認されました。
なお、シンポジウム期間中、急きょMOST傘下の科学技術系大学の幹部職員と当センターとの会談の席が設けられました。ミャンマー側の参加者は科学技術副大臣H. E. Dr. Ko Ko Ooを筆頭に、国内における工学系大学の最高峰にあたるヤンゴン工科大学及びマンダレー工科大学の両校の学長であるProf. Dr. Mya Mya Oo、学生数で最大を誇る西ヤンゴン工科大学の学長補Prof. Dr. Thingi 及びマウビン工科大学の学長補Prof. Dr. Zaw Min Naingの4名です。
会談では、ミャンマー国内の高等教育事情について概要以下のことが伝えられたほか、国内のインターネット環境をかんがみて、全世界に向けて開かれているJSPS事業について、JSPSから直接に募集案内をもらえないか、といった要望がありました。
-全国に170大学あり、すべて国立大学。学費は年間1ドル程度。
-大学は、主に教育省(MOE: Ministry of education)と科学技術省(MOST)が管轄しており、後者が科技系大学を、前者がそれ以外を担当している。この他に、林業省と鉱物省がそれぞれ一つ専門の大学を持っている。
-MOST傘下には、32の工学系、25のコンピューター科学、1つの宇宙科学系の大学があり、約10万人の学生を抱えている。
-博士号を持つ教員の80パーセント以上はミャンマー国内で取得しており、大学間、教員間でのコミュニケーションは円滑である。
-特に力点を置いているのは、生物化学、ICT、工業・生産科学、宇宙科学の4分野である。
-ヤンゴン工科大学とマンダレー工科大学は大学院大学で、教員数がそれぞれ250と140、学生数は600と100である。
当センターとしては、今後の連携への期待を抱きつつ、当該会談内容についてJSPS本部に委細もれなく報告する旨お約束しました。
12月3日はヤンゴン工科大学を訪ねて出張講義を行いました。Dr. Mya Mya Oo学長を初めとする教員陣と話をする中で、JSPS-JICA科学技術研究員派遣事業による研究者派遣の可能性が見出され、土木工学を中心とした工学一般分野での協力について具体的な検討を行っていく予定です。
今回の出張は、折しもアメリカのクリントン国務長官のミャンマー初訪問と時期が重なりました。当センターとしては今後も、今まさに門戸が開かれつつあるミャンマーを注視し、連携の可能性を探っていきたいと思います。