第9回在タイ大学連絡会(JUNThai)開催

2016年12月19日、在タイ日本国大使館で第9回在タイ大学連絡会(JUNThai)が開催されました。

前回の第8回JUNThaiの概要はこちらからご覧いただけます。

第1部では、以下3つの講演が行われました。
・「タイ国における大学入試制度について-キングモンクット工科大学トンブリ校(KMUTT)を事例にして-」
KMUTT学長補佐(国際担当) 兼 機械工学・生物工学科助教 Dr. Anak Khantachawana
・”Perspective on Higher Education in ASEAN –General Overview, Strategies and Student”
東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)副機構長(企画開発担当) Dr. Ethel Agnes Pascua-Valenzuela
 京都大学 国際戦略室 Dr. Fernando Palacio

Dr. Anakは筑波大学でPhDを取得し、日本で研究をした経験をお持ちです。今回のご講演ではKMUTTを事例にしたタイの大学入試制度について流暢な日本語でお話し頂きました。タイでは160を超える大学があり(内独立法人化した大学はKMUTTを含め15校、国立大学は65校)、入学試験は国が3月頃に実施するCenter Admissionと、大学が独自に実施し、自由に実施時期を決めることが出来るDirect Admissionの2種類で実施されているそうです。試験の得点を算出するにあたっては、GAT(General Aptitude TEST)及びPAT(Professional and Academic Aptitude TEST)の成績、小学6年生・中学3年生・高校3年生レベルで実施されるO-NET(Ordinary National Education TEST)の成績に加え、GPA(Grade Point Average)も加味する必要があります。現入試制度では、受験料負担が大きい、受験を何度も受ける必要があり学生が授業に出席できない、大学の入試事務負担が大きい、といった大学側・受験生側双方の問題が発生しているそうです。そのため、2018年から新たな入試制度が出来るということで、現時点でわかっている概要を説明頂きました。また、KMUTTの入学状況や、高齢化社会を迎えるタイの社会問題等についてもあわせてお話し頂きました。

Dr. Anak(KMUTT)

Dr. Anak(KMUTT)

Dr. Ethelは、東南アジアの教育・科学・文化における連携を強化するために設立されたSEAMEOの活動についてご講演頂きました。現在11か国が加盟しているSEAMEOには、優先分野として7つの事項(幼児教育やTVET(Technical Vocational Education and Training)の推進、指導者教育の活性化、高等教育や研究における国際的協調(Harmonization)、21世紀型カリキュラムの採択等)が掲げられています。
中でも高等教育の国際化は経済・社会的発展の重要な要素であることから、ASEAN各国が示す様々な目標・政策や大学の国際化のためのプログラム、国際化のトレンド等について紹介されました。また、Academic Mobility としては、Student Mobility:学生を対象とした文化交流・Academics Mobility:研究者の共同研究等交流・Executives Mobility:大学執行部の開発プログラム、といった3つの類型に分けることが出来ますが、特にStudent Mobilityを行う上での財政、質、情報、適性、システムといった種々の問題への対応についても言及されました。SEAMEO には同地域の高等教育開発を専門とした組織であるSEAMEO RIHED(Regional Institute of Higher Education and Development)が設立されており、Academic Mobility 推進のため、ASEAN及び日中韓10ヶ国を対象としたCredit Transfer Systemプロジェクトを実施すると共に、加盟国を対象にAIMS(ASEAN International Mobility of Students)という学生交流プログラムを実施しています。その他国際的協調のため実施しているプロジェクトや、国際化政策は明快・方針・柔軟性が重要なキーになるといったお話しをされました。

Dr. Ethel(SEAMEO)

Dr. Ethel(SEAMEO)

Dr. Fernandoは、現在は京都大学に所属されていますが、TAG-AIMS(アセアン横断型グローバル課題挑戦的教育)プログラムを実施している筑波大学で同プログラムの運営に長く関与しており、今回はその時の経験について講演頂きました。日本では、「大学の世界展開力強化事業」の一環として2013年からSEAMEOが実施しているAIMSプログラムに参加しており、筑波大学は2014年に同事業に採択された11大学7事業のうちの一つとしてTAG-AIMSプログラムを開始しています。同プログラムは中間評価で7事業の中で唯一最高評価「S」を取得しており、その理由として、一般的に日本からASEANへ行く留学生数の確保が難しいと言われる中で日本からの留学生も多数参加していること、運営にあたってはチーム一丸となって行い、定期的にインバウンド・アウトバウンド双方の留学生が会う機会を作る等、双方の文化への理解度を高める努力がなされていること、等を挙げられました。また、学生が留学を決める際には指導教員からの助言を重視することが多く、指導教員の国際化に対する理解が重要であるといったお話しや、単位互換制度、留学先情報取得の重要性等のデータ分析に基づくお話しに加え、これまでの学生獲得の苦労話などユーモアを交えながらお話し頂きました。

Dr. Fernando(京都大学)

Dr. Fernando(京都大学)

第2部の連絡会では、まず議長として東京農工大学の河合栄一特任教授、書記として同大学の安宅理恵先生が選出されました。

議長を務めた河合特任教授(東京農工大学)

議長を務めた河合特任教授(東京農工大学)

続いてJUNThaiへの新規参加校として、山口大学の紹介が行われました。同大学の富本幾文副学長補佐(国際連携)より挨拶があり、同大学は11月にカセサート大学の理学部内に現地事務所を開所した旨併せて報告がありました。

富本副学長補佐(国際連携)(山口大学)

富本副学長補佐(国際連携)(山口大学)

また、在タイ日本国大使館の寺島史朗一等書記官より「28年度地方留学説明会(タイ)について」説明があり、今年度はピサヌローク、コンケン(以上2地域は既に実施済)、ソンクラーの3地域での開催を予定している旨報告がありました。なお、当センターもコンケン及びソンクラーの説明会には参加する予定です。加えて同書記官より、「日タイ産業人材育成協力イニシアティブについて」、2016年3月及び6月に開催された「産業人材育成円卓会議」等での議論を踏まえた今後の支援方針等について報告がありました。
また、(独)日本学生支援機構(JASSO)タイ事務所より2017年2月25日(土)に開催される「日本留学試験(EJU)と奨学金及び大学学部への進学準備」に関する説明会について案内があった他、上智大学より名古屋大学、東洋大学との3大学共催で2017年1月27日(金)に開催される国際シンポジウム「Innovations in Student Mobility」について案内がありました。なお、同シンポジウムでは、当センターの山下センター長が挨拶を行う予定となっております。
最後に京都大学ASEAN拠点の柴山守教授より現在の幹事校である京都大学及び芝浦工業大学の任期(2017年3月31日)満了に伴う次期幹事校の選定について説明がありました。

連絡会の様子

連絡会の様子

次回のJUNThaiは2017年3月20日(月)に開催予定です。