Thailand Research Expo 2016にてJSPS-NRCTセミナーを主催

2016年8月19日、タイ学術会議(NRCT)が主催するThailand Research Expo 2016会場にてJSPS-NRCTセミナーを実施しました。

Thailand Research ExpoはNRCTが毎年主催している科学博で、期間中会場には多くの機関がブースを展示しているほか、タイ国内外の研究者による学術セミナーも行われます。バンコク研究連絡センターは、2009年のExpo初年度より毎年日本から講演者を招聘し、NRCTとセミナーを共催してきました。今年は、2015年にニューヨークで開催された「国連持続可能な開発サミット」で採択された成果文書「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」を基に、”The Mission of Education and Research for Sustainable Society”をテーマとして日本より東京理科大学・黒田玲子教授、福岡女子大学・和栗百恵准教授、大阪大学・渕上ゆかり特任助教を招きセミナーを実施しました。
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今回はカセサート大学のPrompilai Buasuwan准教授にモデレータをお願いし、講師及びモデレータ全員女性での開催となりました。

Prompilai Buasuwan准教授

Prompilai Buasuwan准教授

開会式では、NRCTのYossavadee Ungvichian上級顧問から挨拶を頂きました。

Yossavadee Ungvichian上級顧問

Yossavadee Ungvichian上級顧問

最初の講演は、今回のセミナーのテーマでもある“Mission of Education and Research for Sustainable Society”と題し、黒田教授にご講演いただきました。黒田先生は2013年にロレアル-ユネスコ国際女性科学者賞を受賞されるなど科学者としてもご活躍されている一方で国連事務総長科学諮問委員会委員も務められており、今回はご自身の研究である「キラリティ(左右非対称性)」から、「科学」と「社会」をつなぐために日々精力的に活動されている取り組みについて講演頂きました。このキラリティという現象は、生命世界と非生命世界のどちらにもミクロからマクロの様々なレベルで出現するということを、身近な題材を用いて分かりやすく説明頂きました。また、ご自身や他の研究者の地道な研究の積み重ねによる研究成果がいかに社会の発展等に活用されているかについても触れ、基礎研究の重要性についてご説明頂きました。

黒田玲子教授

黒田玲子教授

続いて、和栗准教授により“Experiential Learning and Japanese Higher Education: Nurturing Reflectivity, Nurturing Global Citizens”と題し、日本の高等教育の在り方やアカデミアの役割等についてご講演いただきました。講演中は参加者間で議論する時間が設けられたほか、福岡女子大学の学生がスリランカで「開発」をテーマにフィールドスタディを行うショートムービーの紹介もありました。日本の大学では何を学びたいかきちんと理解していない学生も多い中、フィールドスタディに参加した学生らは、言語や文化等による様々な苦労を乗り越えながら、プログラム後に彼らの考え方や関心にも前向きな変化が見られ、これらの実例から学生の“reflectivity(顧みて熟考し、次の行動に生かすこと)”を育むことができるよう大学が組織的に取り組むことの重要性等について説明がありました。

和栗百恵准教授

和栗百恵准教授

引き続き、“Sustainable Management of Natural Resource Use: The Coexistence of Conservation, Economic Activity and Regionality”と題し、渕上特任助教がご自身の研究である「日本の山林管理問題・バイオコークスの分析・伝統的な天然資源の活用」を基に、持続可能な天然資源の活用についての難しさについて講演頂きました。環境保護・経済活動・地域への愛着をバランスよく解決する難しさと必要性について、これまで行ってこられた調査研究から分かりやすくご説明頂き、一見環境保護に良いとされるエコツーリズムについても、外部企業の参入や大量の人口移動等、環境に対し何らかの影響が起こっているとのことでした。今回の講演のキーワードとなる“sustainable society”について、最後に正解はないが最良の解を見つけるためにも様々な観点から研究者が連携を行う必要があるとの説明がありました。

渕上ゆかり特任助教

渕上ゆかり特任助教

質疑応答では、様々な質問があがると共に、参加者から3名の研究者の内容を順に聞くことで、今回のテーマである” The Mission of Education and Research for Sustainable Society”の理念から実際の研究に至るまでが非常に分かりやすく頭に入ってきた、といった意見もありました。

質疑応答の様子

質疑応答の様子

最後に、山下邦明バンコク研究連絡センター長により、3名の女性研究者とモデレータに感謝の言葉が述べられると共に、来年の日タイ修好130周年という節目に合わせ今後一層日本とタイの連携を強化し、JSPS及びNRCTもイベントを盛り上げていきたい、というコメントで会を締めくくりました。

山下邦明センター長

山下邦明センター長

講師3名とモデレータによる集合写真

講師3名とモデレータによる集合写真

MCを務めたNatthida現地職員

MCを務めたNatthida現地職員

Thailand Research Expo 2016会場の様子

Thailand Research Expo 2016会場の様子

セミナーのプログラムはこちらからダウンロードできます。