Thailand Research Expo 2015にてJSPS-NRCTセミナーを主催

2015年8月16日、タイ学術会議(NRCT)が主催するThailand Research Expo 2015にてJSPS-NRCTセミナーを実施しました。

Thailand Research ExpoはNRCTが毎年主催し、国内外の研究者による学術セミナーが行われます。バンコク研究連絡センターは、2009年のExpo初年度より毎年日本から講演者を招聘し、NRCTとセミナーを共催してきました。今年は、2012年にブラジル・リオデジャネイロで開催された国連サミットで採択された合意文書に由来する”The future we want: Academic Challenge for better life”をテーマに、日本より京都大学・藤井滋穂教授、九州大学・岡田昌治教授、上智大学・小松太郎教授を招きセミナーを実施しました。

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開会式では、NRCTのDr. Soottiporn Chittmittrapap事務局長、JSPSの安藤博国際企画課長が挨拶を行い、今回のセミナーを通じて、参加者の交流ならびに今後の両国の交流が益々発展することを期待していると述べました。

SoottipornNRCT事務局長

SoottipornNRCT事務局長

安藤JSPS国際企画課長

安藤JSPS国際企画課長

セミナーでは、パンヤピワット経営学院理事でJSPSタイ同窓会理事でもあるDr. Paritud Bhandhubanyongがモデレーターを務めました。

Paritud理事

Paritud理事

最初の講演は、“People’s water use and sanitation practices in Asian developing countries, and proposals for better hygienic environment”と題し、藤井教授がアジア地域の新興国の水使用について講演されました。藤井教授は、アジア各地の研究者と協力して新興国における水使用や生活排水処理の実態を調査されており、講演では調査結果のデータや写真を用いて様々な国や地域の実態が紹介され、水使用について特に状況の厳しいカトマンズでは、1日あたりの1世帯の水消費量はわずかバケツ2杯分であること等が紹介されました。藤井教授によると、新興国の抱える諸問題に対処するうえで、単純な技術移転だけでは問題解決にはならず、現地の人々の生活習慣や現在のシステムについて理解・配慮することが必要不可欠とのことでした。

藤井教授

藤井教授

続いて、岡田教授が“Social Business for just and sustainable society-Challenge of Muhammad Yunus”と題し、ノーベル平和賞受賞者のモハメド・ユヌス氏の発案した、持続可能な社会の構築を目指すソーシャルビジネスについて講演されました。ユヌス氏の提唱するソーシャルビジネスは、各人の私=Selfish Mindに基づいて展開されるビジネスとは異なるものであり、無私=Selfless Mindに基づいて、利益の追求のためではなく社会問題の解決のために行われるビジネスである、というソーシャルビジネスの概念が紹介された後、九州大学ユヌス&椎木ソーシャル・ビジネス研究センターの活動や、2012年より実施されているYunus & Youthソーシャルビジネスアイデアコンテスト(YY Contest)、2009年から実施されているグローバルソーシャルビジネスサミット等、ソーシャルビジネスに関連する様々な活動が紹介されました。

岡田教授

岡田教授

引き続き、“Education for Sustainable Development (ESD): How do we build and sustain a socially cohesive multicultural society?”と題し、小松教授が一体性のある多文化社会の構築のための教育について講演されました。今回の講演のキーワードとなる“social trust”“social cohesion”について、“personal trust(個人間の信頼)”とは違い、社会の中での知らない人同士の信頼関係であり、社会が機能し、持続可能な発展を達成する上での条件であるという説明がありました。小松教授は紛争集結後のコソボで教育復興に携わった経験をお持ちで、紛争時に往々にして学校が攻撃の対象となることについて、学校は一般的に頑丈に設計されているため紛争時には軍事基地として使用されることに加え、民族性の象徴と認識されるため、との説明がありました。質疑応答では、教育と思想との関係や、教育と宗教との関係について等の質問が挙がっており、平和な社会を構築するために教育の果たす役割の大きさが再認識されました。

小松教授

小松教授

会場の様子

会場の様子

最後に、山下邦明バンコク研究連絡センター長が、今年は日本の戦後70周年という節目となる年であり、この70年間果たして平和は維持されてきたのか、また今後どのように平和な社会を構築するかについて改めて考え直す必要があるのではないか、というコメントとともに、会を締めくくりました。

山下センター長

山下センター長

セミナーのプログラムは下記からダウンロードできます。
JSPS-NRCT seminar_at_Research EXPO 2015