7月4日、キングモンクット工科大学ラカバン(以下KMITL)でJSPS事業説明会を実施しました。同大学は1960年に日本政府より学術面での支援を受け、ノンタブリ電気通信訓練センターとして設立されました。その後1986年に大学として認可され、現在では工学部をはじめ、理農工系の学部が設置され工学系分野のタイを代表する大学となりました。日本との学術交流の歴史も長く、1960年から日本政府の支援を受けて、日本から多くの研究者や専門家がカリキュラム作成支援や技術指導のために同大学に派遣され、現在も共同研究や人材育成面での連携が継続しています。
KMITLには、東海大学、国立高等専門学校機構(高専機構)、福岡工業大学のブランチオフィスが設置されています。今回は、これら3機関とも連携し、オフィスを訪問するとともに、事業説明会にも各機関の代表者にご参加いただき、パンフレット配布や紹介プレゼンテーション行っていただきました。
副学長表敬訪問
Anantawat Kunakorn国際交流担当副学長を表敬訪問し、タイの学術情報について意見交換しました。副学長は、かつてタイの研究者は欧米志向だったが、アジア全体の経済発展とともに、アジアの大学に注目するようになってきたと近年の学術情勢の変化に言及し、JSPSの研究者招へい事業はKMITLでも人気が高く、大学としてもより多くの研究者に日本で研鑽を積んできてほしいと思っていると述べました。しかし一方で、タイ人研究者の海外流出を懸念しており、JSPSのフェローシップを受給した外国人研究者は、将来的に日本で研究する義務があるのかと質問されました。当センターより、フェローシップ終了後に日本の大学で研究員となる義務はないことを説明し、日本での経験を帰国後のキャリアに生かしてほしいと伝えました。
日本の高等教育機関オフィス訪問
東海大学
東海大学は2003年よりASEANオフィスを設置し、現在、富田紘央助教がリエゾン・オフィサーとして常駐しています。事務所では同大学の情報発信に加えて、同大学へ進学を希望するタイ人学生に対して日本語の予備教育を行っています。同大学のタイ人留学生の受け入れは1954年にスタートし、その後、数多くの留学生を受け入れ育成してきました。
高専機構
高専機構は、教育研究連携のためにKMITLを訪問した高等専門学校教員の研究室としてオフィスを活用するほか、全国の高等専門学校のパンフレットを常設しKMITLの学生へ情報発信し、交換留学などの学生交流促進に役立てています。また、同機構はRuttikorn Varakulsiripunth泰日工業大学情報学部長に国際交流コーディネーターを委任されており、現地での国際交流促進に努めています。
福岡工業大学
福岡工業大学は、KMITLと学術連携を行っており2011年よりKMITL内に福工大バンコクオフィスを設置し、同大学へ留学する前の日本語教育を行っています。KMITLへ日本人学生の派遣も行っています。
JSPS事業説明会
今回の事業説明会には、50名近くの研究者が参加しました。Anantawat副学長の開会の挨拶の後、山下センター長よりJSPSの概要に加えて、日本の大学の国際化や海外留学する研究者が減少傾向にあることを説明しました。山田副センター長よりタイ語でJSPSの国際事業を説明し、特に、申請書を書く際の具体的なアドバイスを行いました。JSPS外国人特別研究員に採択され、北海道大学で研究されたKMITL工学部Dr. Duangkamol Na Ranongより申請の経緯や日本での生活について楽しい思い出話も含めながら体験談を話していただきました。
高等教育機関の紹介
JSPSの事業説明に引き続き、KMITLにオフィスを置く3機関に各機関の紹介をしていただきました。Ruttikorn情報学部長より高等専門学校の紹介とタイの工科大学の違いなどについてご説明いただきました。また、Ruttikorn情報学部長は、福岡工業大学のアドバイザーも以前勤めておられたため、同大学の紹介も行っていただきました。JSPS事業に申請する際の受け入れ研究者を探す際は、両機関のオフィスを訪れる日本人教員にコンタクトを取ってほしいと助言されました。
東海大学については、富田助教より、KMITLとの長い交流の歴史に触れ、東海大学へ留学する場合、KMITL内のオフィスで申請書の受付及び入学に関する相談など可能であること、また授業料の減免について詳細に説明いただきました。
KMITL内に設置したオフィスを活用し、日本の高等教育機関が学生や研究者交流を盛んに実施している様子知ることができました。また、事業説明会の中で、日本の高等教育機関に各機関の活動を紹介していただいたことで、タイ人研究者に、日本との学術交流について具体的なイメージを持っていただけたのではないかと思います。