2011年11月8日(火)、当センターメンバー全員でコンケン大学(Khon Kaen)を表敬訪問にしました。当センターの2011年度(4月から翌年3月まで)計画の一つで、タイ国内で9つ認定されている研究型国立大学を表敬し、事業紹介をしようという一環です。これまでにバンコク市内のカセサート大学、チュラロンコン大学、タマサート大学、キングモンクット工科大学、マヒドン大学のほか、地方ではチェンマイ大学を訪問しており、これで7大学目です。
コンケン大学は1964年にタイ東北部(イサーン地方)で最初に設立され、現在では18部局に3万人の学部学生、1.2万人の大学院生、2,000人の教員を抱えるという、タイ国内でも有数の規模を誇る大学です。タイ国内でも特に貧しい地域といわれる東北部における一大教育・研究機関ということができるでしょう。現在、JSPSのアジア研究教育拠点事業とアジア・アフリカ学術基盤形成事業でも、それぞれ一課題が選定されています。
研究・技術移転担当副学長(Vice President for Research and Technology Transferring)であるProf. Dr. Suthipun Jitpimolmardにお話を伺ったところ、特に、医療、健康、食糧、エネルギー、天然資源、環境、物流、教育、先端技術、社会科学といった分野で25の研究施設と30の研究グループを形成しており、研究型大学への移行を進めている状況とのことです。今後は段階的に学生数を絞っていきながら、より研究重視の体制を作っていくとのこと。
前回のチェンマイ大学訪問の際もそうですが、バンコクと地方都市とでは大学の役割・位置づけが多少異なることが感じられます。多くの大学が林立するバンコクでは、大学間での役割分担が成立し、一つの大学は得意分野に絞った戦略で存在感を高めることができます。一方で、地方都市においては、チェンマイやコンケンといった拠点となる大学では求められる分野・役割が広く、その分特色を出しづらくなっている現状です。タイ国内でも大学間の競争は激しく、今後はASEAN域内での競争にもさらされることになります。地方の各大学の危機感は非常に高まっていることがうかがえます。
コンケン周辺では近年、私立大学が設立されてきており、現在進めている研究型大学への移行は地域におけるそういったバランスをみながらの果断であるものと理解されました。
なお、今回のコンケン大学表敬訪問は、事業説明会の実施と合わせて、JSPSタイ同窓会(JAFT)のメンバーでもあるAssoc. Prof. Dr. Sukanya Aimimthamコンケン大学人文社会学部計画・情報担当副学部長(Associate Dean for Planning and Information, Faculty of Humanities and Social Sciences)に全面的にコーディネートしていただきました。副学長表敬のほかに、Dr. Sukanaya自身が臨時講師を務めているという僧侶専用の公立仏教大学Mahachulalongkornrajavidyalaya Universityのコンケンキャンパスを訪問させていただき、飛び入りで「日本講座」を行いました。当大学には国際コースや修士課程、さらに博士課程もあり、お坊さんたちの日本への関心は非常に高く、出される質問にはうならされることもしばしばでした。
タイ全土のお寺の中でも一、二を争う美しさといわれるワット・ノンウェン(Wat Nong Wan)にも案内いただき、9層構造の最上部から市内を望むことができました。美しい湖を囲むように造成された一等地の新興住宅地はバンコクからの投機的な買いにより値段が上昇し、地元の人の購入は難しくなっているということです。
当センターとしては、特に優遇等ができるわけではありませんが、首都外の大学のあり方を念頭に置いていきたいと思います。