2011年8月27日(土)、バンコク市内Bangkok Convention Center at CentralWorldにて、JSPS-NRCT Seminar at Research Expo 2011「Advanced technology in Japan – research for the disabled and elderly」を開催しました。
これは、8月26-30日にNRCT主催で行われたThailand Research Expo 2011の一環として開催されたもので、2009年以来毎年、NRCTと当センターとの共催で開催しています。例年「Advanced Science and Education in Japan」と題して、日本の先端研究と教育を広く紹介し、様々な分野の研究者を日本からお招きして講演いただきてきました。
今回はNRCTのProf. Dr. Soottiporn Chittmittrapap事務局長の強い要望により、昨年お越しいただいた筑波大学教授で株式会社サイバーダイン社CEOの山海嘉之 教授に再登場いただいたほか、2011年2月からJSPS-JICAの枠組みである科学技術研究員派遣事業にて国立シリントン・リハビリテーションセンター(Sirindhorn National Medical Rehabilitation Center)に派遣されている、新潟医療福祉大学の坂井一浩 准教授に講演をお願いしました。
各講演は英語ですが、タイ人研究者によるタイ語での概訳と簡単な説明をつけることで、研究者ではない一般市民が多くを占める聴衆の理解を図っています。
“Cybernics – fusion of human, machine and information systems”
-Prof. Yoshiyuki Sankai (Leader of GCOE, University of Tsukuba)
-Assist. Prof. Dr. Yodchanan Wongsawat (Director, Brain-Computer Interface LAB (BCI LAB), Department of Biomedical Engineering, Faculty of Engineering, Center for Biomedical and Robotics Technology (BART LAB), Mahidol University
筋肉を動かす際に皮膚表明に漏れ出す微弱な生体電位信号をセンサーで読み取って装着者の筋肉の動きと一体的に関節を動かすロボットスーツHAL (Hybrid Assistive Limb)の紹介が行われました。これにより立ち上がる、歩くなどの運動が自律的に可能になるのです。すでに北欧各国とは契約が結ばれているなど、それが現実に利用可能なものだということが、実際に実物を示しながら紹介されました。
“Biomechanics and Human Motion Analysis for Rehabilitation Professionals”
-Assoc. Prof. Kazuhiro Sakai (JICA expert to Thailand with JSPS Program, Niigata University of Health and Welfare)
-Dr. Piyavit Sorachaimetha (The Prosthetics and Orthotics Unit, Sirindhorn National Medical Rehabilitation Center)
高齢者や障害者の介護を行うにあたって、被介護者だけではなく介護する側の動きをカメラなどの測定機器を用いて解析し、双方の力点・負担の重心を明らかにしてサポートを行うという取組みとその重要性が紹介されました。山海教授の講演にも触れながら一番初めに語られた「できるようになるまで続ける」という強い信念が非常に印象的でした。
100名ほど収容の会場には人が溢れて補助椅子が追加されたり、各講演とも質問が相次ぐなど、反響の大きさは一目瞭然と言えるほどでした。
その後、Central World内Laem Charoen SeafoodでNRCT主催の夕食会が開かれ、Prof. Dr. Soottiporn事務局長をはじめとしたNRCT上級職員のほか講演者、タイ人モデレーター、当センター職員等で懇談しました。
タイ社会が今後急速に高齢化を迎えようとしている中で、時勢に適した学術・実践トピックをタイ日両国の学術機関であるNRCTとJSPSが的確につかみ、実施したという点は、大いに評価できるものと言えるでしょう。
当センターとしては今後も、NRCTとの緊密な連携を図り、タイ日両国の科学技術、社会研究の促進に努めていきたいと思います。