竹内センター長の軌跡

2012年6月30日(土)、バンコク研究連絡センター・2010年-2012年センター長である竹内渉センター長(東京大学生産技術研究所・准教授http://stlab.iis.u-tokyo.ac.jp/~wataru/index_j.php)が2年の任期を終えて退任されました。そこで、在任中の竹内センター長の歩みを、セミナー等の記念写真とともに振り返りたいと思います。

1.2010年8月28日、JSPS-NRCTセミナー@Research EXPO 2010
2010年7月の着任から1ヶ月余りの準備期間でしたが、山海筑波大学教授、藤野東京大学教授、平山長崎大学教授というCOEリーダー3名をお招きしました。この、初めての共催事業の成功により、NRCTから確かな信頼を勝ち得、この後、Prof. Dr. Soottiporn事務局長をはじめとするNRCTとの厚い親交と協力関係が始まりました。

2.2011年1月6-7日、JSPS国際フォーラムCCMA
着任後初の、そして最大の研究集会を開催。日本から約10名、アジア各国から約10名の気候変動分野における有力研究者をお招きし、2日間に渡って先端的な研究討議を行いました。東南アジアからの研究発信ができたという意味で、JSPS海外センターの本懐を果たしたともいえます。また、着任半年にあたるこの成功により、この先のセンター運営に一定の自信と見通しをもつに至りました。

3.2011年2月3日、JSPSタイ同窓会ワークショップBio-char
2010年2月に発足したばかりのJSPSタイ同窓会。Dr. Busaba同窓会長のリーダーシップにより、研究活動の地域における実践を試みました。立命館大学から柴田教授、鐘ヶ江教授の2名をお招きし、我が国の大学の力も借りながら、タイにおけるJSPS同窓会のあり方に一定の方向づけを果たしたと言えるでしょう。

4.2011年2月4日、論博メダル授与式 兼 第2回JSPSタイ同窓会総会
2003年以来、毎年NRCTとの共催で続けられている論博メダル授与式。10名の授与対象者のうち7名の参加を得て瑞々しい博士論文発表を分かち合いそれを祝福するとともに、今回初めて日本大使館からゲストをお招きしたことで、タイ-日本社会におけるJSPS同窓会のより深い根づき、定着、発展へと至る道筋を模索しました。

5.2011年3月1-5日、スリランカ出張
ベトナム、シンガポール、バングラデシュ、ラオスに続き、初年度最後の海外出張としてスリランカを訪れました。工学系国内トップのモラトゥワ大学にJSPS同窓生を訪ね、まずは緩やかなものから同窓生間でのネットワーク作りを提案依頼し、スリランカにおける同窓会活動に端緒をつけました。また、国内大学に対して大きな権限を持つUGCに議長を訪ねJSPSネットワークの萌芽をご紹介。ボトムとトップ、両面からの働きかけは戦略的なセンター運営の面目躍如です。

6.2011年6月21日、BRIDGE Fellowship報告会 兼 JSPS事業紹介セミナー@カセサート大学
タイ初のBRIDGE FellowであるDr. Busaba同窓会長に、その長年にわたる日本との研究経験を、所属大学であり国内9拠点大学に選ばれているカセサート大学で若手研究者に披露いただきました。JSPSの予想外の、しかし一方で当然ともいえるタイ国内における知名度の低さを乗り越えるべく、主要大学における事業紹介セミナーをここから開始しました。

7.2011年7月21日、JSPS事業紹介セミナー@タマサート大学
事業紹介セミナーの開催は、まずは副学長など幹部職員への表敬訪問を経て、全面的な協力を取りつけることから始まります。カセサート、チュラロンコン、タマサート、マヒドン、キングモンクットへと立て続けの表敬訪問とセミナー開催が繰り返される夏でした。日本上空での台風発生により飛行機が飛びたたず、ここでは田邉副センター長による事業紹介となりました。

8.2011年7月29日、JSPS事業紹介セミナー@マヒドン大学
一部大学ランキングでは国内最大のチュラロンコン大学をもしのぐマヒドン大学へは、大阪大学名誉教授でマヒドン大学より名誉博士号を授与されている大阪大学バンコク教育研究センターの関センター長のご紹介で学長をお訪ねし、後日、理学部でのセミナー開催の運びとなりました。海外で強く意識されることは、この個々人への知識・ネットワークの集中です。

9.2011年8月27日、JSPS-NRCTセミナー@Research EXPO 2011
着任後2度目の本セミナーでは、昨年に続いて山海筑波大学教授、それにJSPS-JICAの枠組みでタイに派遣されている坂井新潟医療福祉大学准教授という医学系の研究者2名をお招きしました。すでに時間の問題ともいえるタイの高齢社会突入に一石を投じようとするNRCTの意向を十分に汲みとることで、主催者・発表者・一般参加者のすべてが満足する貴重な時間とすることができました。

10.2011年10月11日、チェンマイ大学表敬訪問
タイ文部省は国内に9つ研究拠点大学を指定しています。チュラロンコン、カセサート、タマサート、キングモンクットトンブリー、マヒドン、チェンマイ、コンケン、スラナリー、プリンスオブソンクラ(順不同)のうち半数がバンコクに立地しますが、地方4大学を含めてすべてを表敬訪問しました。アポ取りを含め、国内出張時のMs. Aunchalee通称カイさんの働きは偉大です。迎賓室のような会場に上着なしで招かれたことは、冷や汗ものながら今や良い思い出となりました。

11.2011年10月15日、JSPS-NRCTセミナー「社会科学と日本の大学」
科学というと自然科学に偏りがちなテーマ設定を見直し、東京大学より目黒教授と佐藤准教授、京都大学より玉田教授と片岡准教授という、社会科学分野で活躍する研究者をお招きしました。時まさに洪水迫る中、タイ社会をめぐる一般参加者との白熱した議論は講演者を驚かせるに十分で、すべての科学をカバーするJSPSとして、その存在感を十分にアピールしたといえるでしょう。
同時に、この頃より独立行政法人改革を強く意識。大学との連携を強める一環として、JASSOタイ事務所を演者としてお招きするとともに、タイに事務所を構える日本の大学にポスター作製を依頼。20枚に及ぶ統一様式ポスターはオフィスのほか、ホームページ上にも掲示されています(その後、JSPSの大学連携型成果目標達成法人への移行が明示されました)。http://jsps-th.org/?page_id=1782

12.2011年11月8-9日、JSPS事業紹介セミナー@コンケン大学
洪水禍のバンコクを逃れ東北部コンケンへ。JSPSタイ同窓会員Dr. Sukanyaのお招きを受けての開催となりました。2015年のアセアン経済共同体実現を前により特色ある研究大学への移行を進めるなど、痛いほどの危機感を改めて実感。その一方で家族的な人の温もりは健在で、業務出張でありながらまるで帰省の旅路のように、ほっとできる嬉しさに包まれました。

13.2012年1月10日、BRIDGE Fellowship報告会 兼 JSPS事業紹介セミナー@国立がん研究所
2011年度のBRIDGE FellowであるDr. Danaiに、所属機関である国立がん研究所にて、東京大学への再訪について報告いただきました。2度目の応募で論博事業に通った経験も交えていただき、繰り返し何度も挑戦し続けることの重要さを再確認。治るまで治し続ける、医学という科学の特徴かと考える機会になりました。

14.2012年2月3日、論博メダル授与式 兼 第3回JSPSタイ同窓会総会
ジュゴンの生態研究、途上国における知的財産権、琴の研究という、まさに自然・社会・人文科学そろい踏みのメダル授与式となりました。同窓会総会では仁平大阪大学教授に、その長年にわたるJSPSを交えたタイとの関わりをご披露いただき、国際連携において、核となる人格者の発掘・育成がいかに大切かを痛感した次第です。研究は人なり。

15.2012年2月24-25日、日本-バングラデシュ国交40周年記念 バングラデシュJSPS同窓会科学シンポジウム「社会のための科学」
2011年度中にJSPS本部より所掌を移管されたJSPSバングラデシュ同窓会。その第3回シンポジウムは、日-バン国交40周年を記念する盛大なものとなりました。日本からは木村文部科学省顧問、五十嵐東京大学教授、内田東北大学教授を招へい。カウンターパートとして付き合いの浅いバングラ側との連携は体力・精神力とも払底する2日間でしたが、センター機能としては一つの到達点に至ったように思います。

16.2012年5月8日、JSPS事業紹介セミナー@プリンスオブソンクラ大学
1年がかりのオフィス移転を了えるやいなや、2012年度より本務先での入試担当となり、在タイ時間に大幅な制限がかかりました。そんな中、南部プリンスオブソンクラ大学と北部チェンマイ大学へ、タイ縦断セミナー・ツアーを敢行。4月よりセンター独自に受入れた東京農工大学の大槻研修員も同行です。時間と人員の有効活用は当センターにとって常に喫緊の課題であり続けました。

17.2012年5月9日、JSPSワークショップ@プリンスオブソンクラ大学理学部
青・緑・茶。3つの炭素循環の統合的研究を模索するワークショップを開催。バンコクの大型大学に比べ、地方の大学がその研究の質を問わず見過ごされがちであることを実感しました。東京大学からDr. Kyaw Sann Ooを招へい。深夜まで及ぶ筋書きなき研究談議に花を咲かせたのは、思えば久しぶりとのこと。

18.2012年5月11日、JSPS事業紹介セミナー@チェンマイ大学
タイ第2の都市チェンマイ。月曜朝のバンコク便はチェンマイ大学チャーター便かと見まがうほど大学関係者で占められ、幹部職員に至っては一日に2度バンコクへ赴くこともあるということです。他国とはいえまだ見ぬ大学運営の厳しさに触れ、今、研究者であることへの覚悟に改めて身を引き締めておられました。

19.2012年6月8-10日、JSPS-NRCTセミナー@コンケン大学
初の地方開催となったJSPS-NRCTセミナー。奈良女子大学より林田教授、小野助教、東京大学より今須准教授、関山助教をお招きしての3日間は、日本の最先端研究をタイの大学で受けとめる試みであり、”cutting-edge”を見出しさえすればそれが可能であることを示しました。現役研究者であり、機動力を武器にするセンター長ならではの果実でした。

20.2012年6月23-24日、同窓会長のご家族と旅行
タイ北部ペチャブンへ。Dr. Busaba同窓会長にお招きいただきました。2年間あちこち方々へ行きましたが、思えば、純然たる旅行は初めてです。Dr. Malee同窓会理事にもご参加いただき、タイでの最後の慰労と思い出づくりはタイの家族に囲まれてとなりました。ありがたいことです。

2010-2012年数値データ(2012年6月まで)
センターへの来訪者数(年度ごとの累積数)
:実数170、延べ数233
センターによる訪問件数(年度ごとの累積数)
:116ヶ所、207回
センター用務による海外出張
:11ヶ国、18回
セミナー等の開催
:17回
センター長のタイ滞在日数
:239日(オフィス勤務174日、センター用務出張65日)

センター長の、何においてもポジティブに進んでいく姿を見ていると、思わず自分も前に一歩踏み出したくなります。たくさんのチャンスを与えてくださって、ありがとうございました。本当に楽しかったです。2年間、大変お疲れ様でした。
研修員 大槻 朝比

Dr. Wataru works very hard for promoting JSPS to Thai universities in Bangkok and local area. You give me a lot of chances to accompany visiting Thai universities and meet up VIP person that I had never met in my life. It’s memorable experience and a great opportunity to be working with you. Thank you for your kindness.
Ms. Aunchalee Suksurangkakul, Administrative staff

二人にあらかた言われてしまいました。みなまで言うのは無粋というものですが、ゾッとするような時間と面白くて仕方ない時間の繰り返しでした。
自分で課題を見つける。克服のために具体的に動く。いったん止まって策を練る。それを常に当事者として行う。そういう基本中の基本を忠実に実践し続けるサイクルにどっぷりと浸からせていただきました。修行のようでした。
ありがとうございました。
副センター長 田辺寛明拝