2026年8月3日(月)および5日(水)に、タイ国家研究評議会(NRCT)、日本学術振興会(JSPS)及び日本学術振興会タイ同窓会(JAAT)の共催により、「高齢者の自立支援に向けた身体機能回復・リハビリテーションケアの新たな展開」をテーマに第1回ワークショップを開催しました。
両日とも、日本におけるFunctional Recovery Care(FRC)の理念や実践事例に関する講演に加え、タイにおける認知症ケア及び脳卒中後ケアの取組について医療・介護の専門家による事例紹介が行われました。また、質疑応答や意見交換を通じて、日本とタイ双方の高齢者ケアを取り巻く現状や課題、高齢者の自立支援に関する実践的な内容について活発な議論が交わされました。以下では、8月5日にバーンペーオ総合病院で開催されたワークショップの内容を中心に紹介します。
5日の開会式は、JAATの会長Dr. Pornpen PATTANASOPHONの開会挨拶で始まり、NRCTのMs. Kwansiri Chonyuth国際部長、JSPSバンコク研究連絡センターの藪田かず美副センター長、バーンペーオ総合病院Dr. Wachiraporn Promjitthipong発達・行動小児科副部長による歓迎挨拶がありました。
開会式後に、まず、国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科小平めぐみ准教授より、「Functional Recovery Care(FRC)―Japanese Specialized Care Method―」をテーマとした講演が行われ、日本における認知症ケアおよび脳卒中後ケアの取組と事例が紹介されました。

身体ケアに関する事例では、長期間寝たきりの状態にあった脳卒中患者に対し、立位訓練から段階的に歩行訓練を実施することで、自力歩行の回復や要介護度の改善につながった事例が紹介されました。また、長年ベッド上で生活していた患者が、継続的なリハビリテーションによって歩行能力を取り戻した事例や、胃ろうによる栄養摂取から経口摂取への移行を目指した支援についても説明がありました。これらの事例を通じて、適切なケアを継続することで、高齢者の身体機能や生活機能の回復が期待できることが示されました。
認知症ケアについては、薬物療法だけに頼るのではなく、本人の生活機能を維持・向上させる心理社会的アプローチを優先することの重要性が紹介されました。また、水分摂取や適度な運動、バランスの取れた食事、排泄ケアといった日常生活の基本的な支援が、認知機能の維持や自立した生活の継続に重要な役割を果たすことが強調されました。講演を通じて、FRCは身体機能の回復だけでなく、高齢者一人ひとりの尊厳を尊重しながら、自立した生活の実現を目指す包括的なケア手法であることが参加者に共有されました。

講演後には、会場で活発な意見交換が行われました。バーンペーオ総合病院の医療従事者からは、医療現場における課題や日本におけるFRCの実践について多くの質問が寄せられ、小平准教授は日本語・タイ語の逐次通訳を介しながら、実際のケア方法を実演を交えて説明し、参加者との理解を深めました。

午後のセッションでは、バーンペーオ総合病院、Wannarak Hua Hin社及びタマサート大学の医療・介護分野の専門家が登壇し、タイにおける脳卒中後ケア及び認知症ケアの実践事例を紹介するとともに、高齢者ケアの現状や課題について議論が行われました。最後に、タマサート大学のDuangjai Lorthanavanich助教より、ご両親の実体験をもとに、高齢者の自立支援に向けた身体機能回復の取組が紹介され、リハビリテーションケアが高齢者の自立支援に果たす役割と、FRCのさらなる普及・発展への期待が示されました。
本ワークショップには80名を超える関係者が参加し、日タイ両国の研究者、医療・介護従事者等が専門的知見や実践経験を共有することで、高齢者が自立した生活を継続するための機能回復ケアの普及・発展に向けた相互理解とネットワークの強化が図られました。










