2017年7月12日、フィリピン・トレード・トレーニングセンター(フィリピン・パサイ市)で第5回JSPSフィリピン同窓会(JAAP)シンポジウム”Science and Technology towards Green Communities”が開催されました。
同シンポジウムは昨年に続き、フィリピン科技省(Department of Science and Technology: DOST)主催の科学技術広報イベント「科学技術週間(National Science and Technology Week: NSTW)」の一環として開催され、別会場ではJAAPのブースも出展されました。
シンポジウムは、JAAPのSusan M. Gallardo 会長の開会の挨拶で始まり、続いて、在フィリピン日本大使館 田口利行専門調査員、当センター山下センター長から祝辞が述べられました。
同シンポジウムには、当センターがサポートしている地域の同窓会(タイ・バングラデシュ・ネパール・インドネシア)宛にJAAPから招待状が送られていましたが、残念ながら今回はどの同窓会からも出席が叶いませんでした。しかしJSPSネパール同窓会(NJAA)のRijan Bhakta Kayastha会長、JSPSタイ同窓会(JAAT)のDanai Tiwawech から祝辞が届いていたため、JAAP理事会のRenato Reyes事務局長、Susan May F. Calumpang副会長から各々紹介がありました。
また、DOSTのLeah J. Buendia 次官補から基調メッセージが紹介されました。
次に、2016年度にJSPSの「論文博士号取得希望者に対する支援事業(RONPAKU)」を終え、学位を取得された5名について紹介がありました。そのうちDr. Jason Maximino C. Ongpeng, Dr. Laura B. Fermo, Dr. Marc Lawrence J. Romeroの出席者3名に対し、山下センター長からメダルが授与されました。
今回のシンポジウムでは、日本人研究者2名、フィリピン人研究者1名の基調講演が行われました。最初の基調講演は東京工業大学の阿部直也准教授から”Exploration of the Necessary Conditions to Realize Green and Sustainable Communities”についてご講演頂きました。阿部先生のご講演では、持続可能な開発及び都市を考える上で重要な要因となる「コミュニティ」の世界的な都市化傾向について、またコミュニティが抱える問題が都市部と農村部で異なり、時代においても変化していく中で何を人々は望み、持続可能な社会としてシステムを構築できるか、日本での調査結果及びフィリピンのセブ島で実施しているランプ貸出プロジェクトの事例を紹介しながらお話し頂きました。
また、午前の部の最終講演として、北海道大学の船水尚行教授から”Sanitation Value Chain: Its Concept and Element Technologies”と題しご講演頂きました。船水先生は日本のトイレの衛生システムが抱える問題を挙げながら、高齢化・少子化社会に対応した衛生システムのバリューチェーンが必要であること、開発途上国の衛生システムを考える上で、開発国が既に抱える問題を解消した、より現代的なシステムを構築すべきであること、衛生システムのバリューチェーンにおいては、これまでの排泄物を処理するという発想から人々に利益をもたらすような資源という思考でシステムを構築すべきである、といったお話しをユーモアを交えながらご説明頂きました。
午後の基調講演は、デラサール大学のDr. Jonathan Dungcaから、”Utilization of Sustainable Materials for Ground Stabilization”というテーマでご講演頂きました。都市化が進むフィリピンでは道路開発が進められており、供給可能な基盤材料の改良が必要不可欠であることから、利用する石灰石やその配合についての研究内容についてご紹介頂きました。
3つの基調講演終了後の質疑応答では、会場からそれぞれの先生に対して具体的な質問が数多くあがる等、大変な盛り上がりを見せていました。
基調講演後は、引き続きJAAPの同窓会総会が行われ、Susan M. Gallardo 会長からJAAPの活動報告がありました。また、JAAPでは同窓会独自のアウトリーチ活動を積極的に展開しており、今回はアウトリーチ活動先の一つとしてQuezon州Mulanay市長のHon. Joselito Ojeda氏にお越し頂き、Mulanay市の観光案内とともに同市でのJAAPとの活動について紹介がありました。
続いて、山下センター長によるJSPS概要や国際事業についての紹介がありました。
総会の最後には、JSPS国際事業経験者であるDr. Lerma Ocampo (2016 BRIDGE Fellowship Program)、Dr. Elmer Bautista (論文博士号取得希望者に対する支援事業)、Dr. Inocencio Buot, Jr (外国人招へい事業・外国人特別研究員)、Dr. Mary Donnabelle L. Balela (2016 HOPE fellow)から、それぞれの日本での体験談についてご紹介頂きました。
今回はJAAPメンバーをはじめ約90名の参加があり、終始活気のあるシンポジウムとなりました。最後はJAAPのSusan Calumpang副会長による閉会の挨拶によりシンポジウムが締めくくられました。