産業人材育成円卓会議“2nd Round Table Conference on Human Resources Development”に参加

2016年6月20日、産業人材育成円卓会議”2nd Round Table Conference on Human Resources Development”に参加しました。同会議は今年3月に第1回目が開催され(そのときの様子はこちら)、今回もムエタイをイメージしたステージ上で活発な討論がなされました。

まず、佐渡島在タイ日本国特命全権大使による開会の挨拶があり、今回の会議の内容は正式なイニシアチブとして日本政府にも提案したい旨が述べられました。

佐渡島在タイ日本国特命全権大使

佐渡島在タイ日本国特命全権大使

続いてタイ国首相府Kobsak Pootrakool氏による基調講演があり、その中でタイの今後の発展のポイントとして「新規インフラの整備」「新たな産業の創出」「新たな産業を発展させる人材育成」の3つを挙げられました。
そして、「日泰人材育成イニシアチブ」をテーマに、以下6名によるパネルディスカッションが行われました。
・タイ科学技術省大臣(Minister of Science and Technology) Pichet Durongkaveroj 氏
・タイ工業連盟副会長(Vice Chairman, The Federation of Thai Industries) Thavorn Chalassathien 氏
・キングモンクット工科大学ラカバン校(KMITL)学長 Suchatvee Suwansawat 氏
・東レ・インダストリーズ・タイランド代表取締役(Managing Director, Toray Industries(Thailand) Co., LTD) 丁野 良助 氏
・東京工業大学学長(President, Tokyo Institute of Technology) 三島 良直 氏
・在タイ日本国大使館特命全権大使(Japanese Ambassador) 佐渡島 志郎 氏

パネリストの集合写真

パネリストらの集合写真

「タイには日本企業が多く進出しており、エンジニアは必要とされているが、現状では質・量ともに不十分で政策による底上げが必要とされている。エンジニアに憧れる子供は多いが実際にエンジニアになる若者は少なく、さらに理系の優秀な学生らは金融業界や政界へ進出するため優秀なエンジニアが流出しており、その一因はエンジニアという職業のキャリアパスや報酬に魅力が欠けている。」という指摘がありました。これに対し、「日本には優秀なエンジニアが多く、彼らが育つ環境があったから、高度な成長を遂げることができた。」、「単純にエンジニアの数を増やすだけではなく、よりクリエイティブで優秀なエンジニアの育成が必要だ。」といった意見があり、この点において両国の認識は一致していました。
また、今後のタイ側への支援について、人材育成には日本からの金銭的支援が欠かせないが、タイへの金銭的支援は他のASEAN諸国への支援額と比較すると多くはないので、継続的な支援(投資)が必要だろうといった発言がありました。

その後、第2部のディスカッションでは、「タイの製造部門の若手エンジニアのキャリア開発」をテーマに日系企業、タイの大学教授及びタイの若手エンジニアらが意見を交わしました。
若手エンジニアからは「エンジニアはタイの子供にとっては憧れの職種であり、エンジニアとしてチャレンジングな仕事をしてみたいと思っているが、実際にエンジニアとして働いてみると、業務内容(生産が中心でクリエイティブな業務が少ない)、キャリアパスや報酬面にギャップがある。」といった本音が聞かれました。これに対し、日系企業のパネリストは「人材の絶対数が少ないうえに、企業が求めるレベルの人材も少ない。新しいことにも挑戦でき、同時にスキルアップを図れる環境を提供できるのが良い会社の条件であり、企業側はエンジニアのキャリアパスを明確にする必要がある。」と述べるなど、率直な意見で議論が進み、非常に活気のあるディスカッションとなりました。

ディスカッションの様子

ディスカッションの様子

そして、最後のセッションでは、東京工業大学 三島学長が「東京工業大学の教育改革とタイでの活動」と題してご講演されました。同大学は、タイの複数のリーディング大学と連携し、「TAIST(Thailand Advance Institute of Science and Technology)-Tokyo Tech」という国際共同事業に2007年から取り組んでおり、この事業を通じて科学技術分野を担う人材の育成を推進しているそうです。また、三島学長は就任時(2012年10月)から、学部から大学院まで一貫したカリキュラムを学生に提供できるように学科等の再編を行い、博士後期課程まで人文社会系科目の講義を取り入れることで人間性にも富んだエンジニアの育成を目指されているとのことでした。

東京工業大学 三島学長

東京工業大学 三島学長

会場にはタイの学生を含む大学関係者や科学技術関連機関関係者だけでなく報道関係者の姿も多く見られ、本会議の注目度の高さを伺うことができました。