森林総合研究所 酒井研究員が来訪

2012年6月13日(水)、森林総合研究所(FFPRI: Forestry and Forest Products Research Institute)より酒井正治(さかい・まさはる)研究員が当センターを来訪されました。

酒井研究員は1989年から2年間、タイの王室森林局(RFD: Royal Forest Department)に、2007年から2年間、国際農林水産業研究センター(JIRCAS: Japan International Research Center for Agricultural Sciences)のタイ事務所に出向しておられ、タイにおける森林研究で長い経験をお持ちです。

センター長、酒井研究員

センター長、酒井研究員

今回の来訪は、JSPS-JICAの枠組みで実施される科学技術研究員派遣事業(DSTR: Dispatch of Science and Technology Researchers)への申請についての情報収集が目的です。タイでは北部でチークなど森林の違法伐採が大きな問題となっています。タイ国内での違法伐採林・木材を隣国ミャンマー等からの輸入品と称して加工・販売するケースが見受けられるとのこと。

こうした問題に対して、酒井研究員はアイソトープ、同位体分析の手法を用いることで対策を講じられるとして、まずはタイ国内で本格的な研究分野の立ち上げ、人材育成、グループ形成を考えておられます。

そこで、FFPRIではタイのカセサート大学、RFD、土地開発局(LDD: Land Development Department)などのグループをカウンターパートとして、DSTRによる共同研究を検討しており、その先には、JST-JICAの枠組みである地球規模課題対応国際科学技術協力(SATREPS: Science and Technology Research Partnership for Sustainable Development)への発展も視野に入れておられます。

タイで利用可能なJSPなど日本由来の研究資金はいくつかあり、それぞれに少しずつ性格が異なります。それらを大まかに要約すると、

a)DSTR(JSPS-JICA):本格的な共同研究を行うというより、その種まきとして人材育成を行うもの
b)アジア・アフリカ学術基盤形成型(JSPS):学術・科学研究における持続的な共同・協力関係を確立するもの
c)SATREPS(JST-JICA):拠点間での共同研究により地球規模の社会問題の解決を目指すもの

ということができ、それらはJICA、JSPS、JSTという事業実施主体の正確にも大きく依存するものです。それらを大まかに要約すれば

JICA:国際協力、社会開発、その人材育成
JSPS:科学研究、研究人材養成
JST:科学研究と、その社会還元

ということができ、当センターとしては、これら複数の事業主体が目指す「社会へのインパクト」と「科学の探究」を並行して、または織り交ぜながら、どちらの視点からも評価しうるような課題設定を行うことが重要ではないかと考えております。

タイでは上述の北部違法伐採のほかにも、東北部での塩害地問題がありますし、南部ではゴムのプランテーションが盛んです。一定の研究分野においては、こうした社会背景と科学の進展との橋渡しを意識していただくことで、長期的な研究プランの立案が可能になるのではないでしょうか。